日本でのDV被害者支援

| 日本のDV被害者支援 | 外国籍女性のDV被害者支援 |  

日本のDV被害者支援

 2015年 8 月 23 日に、一般社団法人ウェルク主催による「在住外国人 DV 被害者支援のエキスパ ート養成講座」開催第1回目に、土方聖子さんが「日本のDV被害者支援について」をテーマに講演。以下は、その話を基に、加筆していただいたものです。 

土方聖子さん

NPO 法人全国女性シェルターネット共同代表。多摩で DV を考える会元代表。女性の人権の確立と安心して暮らせる社会の実現を目指し、シェルター及びステップハウスを立ち上げ、DV 被害にあった女性、子どもへの支援を行っている。同行支援事業多摩地域コーディネーター。
 



全国女性シェルターネットとは、北海道から沖縄まで全国で 70 余の団体がDVサポートシェルターを運営している民間草の根の女性たちが束になり、配偶者からの暴力の防止及び被害者の保護等に関する法律(以下、DV防止法)がないときから、DV防止法を作らなければとロビー活動等をして、当事者と共にここまで活動を続けている全国組織の団体です。

主な団体のミッションは・・・ 

① 調査研究・政策提言
② 被害当事者の直接支援
③ 被害当事者の回復支援
④ 被害当事者の自立支援
⑤ 啓発教育・支援員養成

等々、女性や子どもに対する暴力の根絶が大きなテーマで日頃活動を行なっています。

 DV被害体験のある女性は 4 人に一人、そのうち 9 人に一人は「命の危険を感じたことがある」という。 

 また、およそ 3 日に一人の割合で女性が親密なパートナーから殺されているという実態があります。DV被害から逃れて家から逃げ出す母子は年間 10,000 人、配偶者暴力相談支援センター(以下、配暴センター)が対応された件数は約 60,000 件と聞き及んでおります。 

 DV被害者は公的のみならず民間団体への相談をされ暴力の発見・気づき・危機回避等を考え、危険な家から逃げ出された後、公的シェルター、民間シェルター、さらにはステ ップハウス(中・長期DV被害者自立支援施設)、子どものシェルター等々に行かれ一時的に危険から脱出され、心身ともに休められ、少し落ち着かれてから、今後の方針に向け自立の道を始めます。この緊急救済と当事者に寄り添った自立支援活動が民間団体における大きな役目であります。

ライフワークはDV被害者支援

 実は私は、現在は東京都内の民間支援施設でDV被害者の支援のお手伝いをさせていただいておりますが、13 年前には行政の職員として、男女共同参画センター、女性センターの業務の一員で、それが行政における私の一番最後の仕事でした。 

 ちょうど 1995 年の第4 回世界女性会議(於北京)が終わったあたりから、DVの被害者の方々が私たちのところに、かなり多く駆け込んで来られ、子どもの手を引いて「夕べ一晩、駅のベンチにいて、朝になるのを待って役所に参りました」と。一番電車に子どもと一緒に・・・と、追い詰められ夜明けの電車に飛び込むつもりで家を出たのですが、子どもの手のぬくもりが私の心を打消し飛び込むことができなかったとおっしゃられた女性の様子に、私自身の業務の重要さを痛く感じ(当時は役所内にDV被害者に協力する対応窓口がなかった)、定年退職後の役目(ライフワーク)は、DV被害者へのお手伝いをしなければ・・と自身に言い聞かせました。 

 当時私の周りにはいろいろな女性が来られました。この社会構造の中で、いまの日本女性たちが生き延びなければならない。子どもを産んで、その子どもを育てあげたとしても、自分の将来の身分保障は何もないわけです。夫の配偶者ということで配偶者手当や扶養手当とかそういうものはあっても、夫からは二言目には「だれのおかげで飯を食っているのだ」と。我慢することが自分の生きる道、子どものために我慢しなければと。私たちの所に来られたDV被害者は、いろいろなご意見を寄せてくれました。でも自分が与えられている男女共同参画社会を実現しようという中にはDV被害者に対応しなければいけないという業務そのものがありませんでした。東京都職員として婦人相談員さんが市役所に派遣されておりましたが、市業務内の組織に確立していませんでした。いま全国で 1,200 余りの相談員さんが、DV被害者の相談を受けたり、自立支援でご苦労されておりますが、当時はDV被害者の対応のマニュアルもありませんでした。 

サイト内検索