DV調査報告
DV被害者への同行支援
<見える化>概要
Ⅰ DV被害の現状と同行支援
https://werc-women.org/network/DV-doukousien.pdf
*無断転載禁止。転載希望の際はご連絡ください。
DV被害者支援をめぐる背景
DV被害者支援をめぐる社会状況と課題
同行支援の必要性と現状
アドボカシーとは?
DV・DV被害者の多様化への対応 など
Ⅱ 同行支援の現状分析
https://werc-women.org/network/doukousien2.pdf
*無断転載禁止。転載希望の際はご連絡ください。
同行支援・集計の概要
◆事業の目的
東京都内で活動している10のDV被害者支援団体(外国籍DV被害者支援団体含む)が連携し、的確に、より多くの当事者ニーズに迅速に応え、当事者の立場での代弁や権利擁護を実施し、エンパワメントできるように援助することを目的とする。
- 同行対象者:DV被害者で、同行支援を希望する人
- 同行範囲:東京都内(その他は要相談)
◆期間
- 同行支援事業実施
2012(平成24)年4月1日から。現在、実施中。 - 集計分析
2015(平成27)年度 2015年4月1日から2016年3月31日
2016(平成28)年度 2016年4月1日から2017年3月31日
◆事業実施団体 東京都内で活動するDV被害者支援の民間団体
- 一般社団法人ウェルク ほか9団体
◆結果の概要
- 2015(平成27年)年度結果と考察
同行件数 588 件
(日本人被害者 343件 外国籍被害者 245 件) - 2016(平成28年)年度結果と考察
同行件数 529件
(日本人被害者 265件 外国籍被害者 234264件)
〇同行先について
- 同行先を多い順に並べると、2015年度は法律相談、福祉事務所、区役所・市役所等、家庭裁判所、医療機関。2016年度は法律事務所、家庭裁判所、医療機関の順になり、裁判所と医療機関の割合が高くなったと読める。
- 外国籍被害者の同行先としては、2015年度は法律事務所、家庭裁判所、区役所・市役所の窓口の順。2016年度は法律事務所、医療機関、区役所・市役所の窓口の順。医療機関の割合が高くなったと読める。その他には、法務省や入国管理局などがある。
〇同行回数について
- 同行回数は「1回目」と申告する人が全体の3〜4割である。私たちが実施している同行は一人年間5回を原則としているが、必要に応じて受けている。2015年度は6回以上も約2割(19%)ある。5回以上も16%となっている。複数回の同行支援のニーズがある。
- 外国籍の場合も1回目がもっとも多く35%、5回が2割以上を占める。全体でも5回以上が16%、外国籍は22%と、複数回の継続的な同行が必要であることがわかる。
〇同行時に同伴した子どもの数について
- 2015年度は3割以上(32%)で同伴する子どもがおり、うち半数以上のケースで子どもは2人以上である。2016年度は子どもが同伴したのは約2割で、うち、約9割で同伴の子どもは1人だった。
〇同行される人の年代について
- 40代がもっとも多く、40代、30代の順になっている。2015年度に4%だった20代以下が2016年度は10%と割合が高くなった。また、50代の割合も2015年に比べて2倍になった。
- 外国籍も30代と40代の当事者が多く、全体の7割を超える。
〇外国籍被害者の国籍について
- 地域別にみると、2015年度は東南アジアがもっとも多く、国籍別ではタイ、フィリピンの順である。2016年度も東南アジアが7割以上を占め、次いで東アジア、中南米の順。国籍別に見ると、タイ、フィリピン、中国、ブラジルと続く。2015年度と比べて、オセアニア、南アジアの国籍が増えている。
〇危険度について
- 2015年度は、回答で不明を除く約3分の1において、危険度は「高い」もしくは「もっとも高い」状況の割合が高く、2016年は危険度の割合が低かったと読める。危険度については、加害者やその親族・知り合いからの追跡の有無などから支援員が判断している。
〇当事者の居住形態について
- 2015年度の居住形態については「アパート」がもっとも多く、つづいて「シェルター」、「ステップハウス」、「母子支援施設」の順となっている。加害者から離れた直後から安定した居住に至るまでの間で当事者が同行を依頼していると考えられる。2016年度もアパート居住が約3割とで、次いで「シェルター」、「ステップハウス」、もしくは「母子支援施設」の順に多かった。
- 2016年度の外国籍は「アパート」に居住するケースがもっとも多く、次いで宿泊提供施設、母子支援施設となっている。 など
◆考察 同行レポートのコメントから見る同行支援の実態
Ⅲ 同行支援の効果
https://werc-women.org/network/doukousien-hyoka.pdf
*無断転載禁止。転載希望の際はご連絡ください。
在住外国人および日本人DV被害者への同行支援の効果についてのアンケート調査
DV被害者への同行支援について、同行を依頼したDV被害当事者と同行先に、アンケートを実施しました。
1 調査概要
(1)事業実施時期 平成29年10月〜12月
(2)事業実施場所 東京都内
(3)実施方法と実施数
- 同行支援を利用したDV被害当事者に、ハガキによるアンケートを実施。
70人(日本人65人、在住外国人5名 すべて女性) - 在住外国人・日本人のDV被害者支援に関わる弁護士、行政、民間支援団体等へのアンケートを実施。
61機関(日本人対応 33機関54%/在住外国人対応 28機関46%)
2 結果概要
【当事者の評価】
- 同行支援を利用したDV被害当事者の9割以上が同行支援を評価している
- 「不安が軽減した」97%、
「一人で言えないことが言えた」94%、
「相手とのやり取りがスムースになった」91%、
子どもの見守りがあってよかった(同伴の子どもが当事者100%)だった。
【同行先評価】
- 同行先の機関等に、同行支援の効果についてきいたところ、9割が「話し合いが効率的だった」「内容的に正確なコミュニケーションができた」と答え、8割が「相談者が落ち着いているように見えたと」と答えている。
*「話し合いが効率的だった(73%)」
「どちらかとうと効率だった(17%)」。
*「相談者と内容的に正確なコミュニケーションができた(75%)」
「どちらか当てはまる(11%)」。
*「相談者が落ち着いているように見えた(73%)」
「どちらかといえばあてはまる(7%)」。 - すべての同行先機関が「同行支援サービスがDV被害者支援において必要」と答えている。
DV被害者への同行支援を
<見える化>しました
役所に行くのも
弁護士に会うのも
裁判所に行くのも
一人では不安だった
一人ではうまく話せなかった
一人ではできなかった
…かもしれない
でも、隣に寄り添ってくれる人がいて
信じてくれる人がいて
踏み出すことができた
立ち向かうことができた
同行支援は私の命綱になった
(DV被害者から)
アドボケターとは、
声を奪われた被害者の権利を擁護し、
必要に応じて同行支援を行う人。
(『アドボケター養成プログラム』FTCシェルター刊から)
DV被害者に寄り添う支援として同行支援があります。
DV被害者は被害から逃れた後、離婚や親権についての調停や裁判、行政への住民票等の措置や様々な支援の申出、治療での通院等が必要となります。しかし、DV被害者は、一時的に回復したかに見えても、フラッシュバックなどトラウマの影響、支援現場での二次被害等により、人との対応に恐怖感や不安を覚え、記憶障害や思考を整理しにくい等の困難状況に陥る場合も多いものです。
そのため、当事者に寄り添い、同行し、対応する人や機関との橋渡し、被害者の権利を擁護する長期的・継続的な同行支援が必要不可欠となります。特に、言葉や在住資格の問題、自分が育った文化と違う日本で生活する中でDV被害を受けた在住外国人女性の場合は、通訳・同行支援は、字義通り命綱となります。実際に、家庭裁判所や法律事務所、役所等への同行は上位を占めています
同行支援は、単にDV被害者に付き添うことを意味するのではありません。被害者の身を守り、被害者一人では対応できにくい場面で、被害者の権利を擁護する支援であり、被害者の回復・自立に向けた、なくてはならないアドボカシーとしての意味があります。
現場で同行支援をしている私たち支援者は、同行支援の必要性とその効果について、身を持って実感してきました。被害者当事者から、「同行があって本当によかった」との声を頂いてきました。けれども、今までDV被害者への同行支援の実態とその効果について、なかなか一般の方々や社会に理解してもらえませんでした。
そこで私たちは、東京で実施してきたDV被害者への同行支援の実態と効果を集計・分析し、<見える化>しました。在住外国人被害者をはじめDV被害者の実態と同行支援について、多くの方々に理解し関心を持っていただけたら幸いです。
本事業は、分析と監修を中央大学の武石智香子教授に依頼しました。中央大学商学部武石ゼミの学生さんにご協力頂きました。また、平成29年度東京都在住外国人支援事業助成を受けています。
*無断転載禁止。転載希望の際はご連絡ください。
2018年3月
一般社団法人 ウェルク